私自身の落選原因のうち、第一に外部環境を分析します。選挙に影響を与えうる外部環境は多岐にわたると思います。以下4つの事象を検討したいと考えます。

①     経済環境

②     政治環境・選挙報道・投票率

③     選挙のタイミング

④     選挙の政策的争点

①経済環境について

安倍政権のデフレ脱却と経済成長に対する強いコミットメントにより、2年間で日経平均株価が9000円程度(野田総理が解散宣言した2012年11月中旬)から、17,350円程度(安倍総理が解散宣言した2014年11月中旬)程度と、大きく向上しています。

そして、安倍政権になり日銀総裁をリフレ派といわれる金融緩和推進論者の黒田氏を任命し、黒田氏による大胆な金融緩和により、2年間で82.5円(2012年11月)から118.6円(2014年11月)と円安が大きく進んでいます。

2014年末の時点での経済環境については、安倍政権の経済政策のお陰で一部の方々、すなわち富裕層、投資関連企業(不動産、金融業)、輸出系企業(自動車、機械産業)、観光関連業などが資産効果及び円安効果によって恩恵を受けていたということが言えると思います。他方、地域の商店街など小売店、サプライチェーンの下流にある中小零細企業、円安で影響を受ける輸入系企業(エネルギー産業など)には、ほとんど影響がないかマイナスであったと考えられます。

この点、自公政権は、第47回総選挙にあたり、アベノミクスを地方へ普及させていくと訴え、地方創生政策(中小企業対策や補助金メニューなど)を提示し、経済政策により恩恵を受けていない方々に対して、対応する政策を提案していました。

また、完全失業率については、2年間で4.1%(2012年11月)から3.5%(2014年11月)と低下しています。また、安倍政権の2年間で雇用者数(労働力人口から役員・個人事業主を除く)が5,153万人(2012年)から5,240万人(2014年)と90万人程度の増となっています。安倍政権になって以降、雇用の増加という意味において、サラリーマン層においてもプラスはあったと思います。加えて、安倍総理が政労使会議の中で経団連側に賃上げ要請を行い、結果として2014年には定期昇給とベースアップを合わせて賃上げ額の平均は5928円、引き上げ率は2.07%となりました。名目賃金の上昇という意味において、プラスがあったようにも見受けます。しかし、他方で、インフレ率で割り引いた実質賃金は2013年中旬から連続して前月比マイナスが続いています。つまり、名目物価上昇に名目賃金の上昇は追い付いておらず、実質賃金の低下が起きていました。その意味ではサラリーマン層についても、マイナスがあったとも言えます。

この点、自公政権は、第47回総選挙にあたり、安倍政権の成果による名目賃金の向上を成果として訴えており、名目賃金と実質賃金の論点から視点がずらされていたように思います。

経済環境自体は、全体として与党に対して追い風が吹いていたものと思います。安倍政権の経済政策により恩恵を受けていない方々に対しても、与党側から(効果が上がるか否かはさておき)対応策が提示されており、安倍政権の経済政策のマイナス部分について強調されることはありませんでした。

②政治環境・選挙報道・投票率について

2012年の選挙と異なり、今回の選挙ではいわゆる「第三極」に対する強烈な逆風が吹いていました。

私が従前所属していたみんなの党は、渡辺代表による強権的な政党経営に端を発して、2013年12月に、渡辺代表を信任する方々と江田前幹事長と行動を共にする人たちとに分裂を致しました。私を含む14名の議員が、江田前幹事長と共に、新しい政党である結いの党を創設しました。みんなの党は、分裂騒動以降も渡辺代表の金銭問題や党の路線問題など内部においてゴタゴタした印象がぬぐえず、最終的に選挙直前の2014年11月に解党するということになりました。

第三極の代表格であった日本維新の会は、橋下共同代表の従軍慰安婦問題に関する発言や石原共同代表の極右的な発言により、特に関東圏においては評判を落としていました。その中で、結いの党と合併することで党勢回復を図りたい橋下代表と右翼的な立ち位置で独自路線を貫きたい石原共同代表の路線対立が明確化し、2014年夏に橋下代表の日本維新の会と石原最高顧問・平沼代表の次世代の党の2つに分党されました。結局、橋下代表の日本維新の会は、2014年9月に結いの党と合流して維新の党となりました。

しかし、いわゆる「第三極」を巡る政党状況は、みんなの党が消滅し、日本維新の会の一部右翼的な勢力が次世代の党を結党し、大阪系の勢力がみんなの党の一部と合流して維新の党と名前を変えたという構図になりました。第三極を巡る政治状況だけをとっても、選挙直前までゴタゴタしており、非常に分かりづらいものとなっていました。

結果論として、民主党の方が、野党としては、第三極政党よりも相対的に信頼できるという、というムードがあったと思います。

また、総選挙直前のメディア報道では、早々に、自民党が単独で300議席越えと言われていました。加えて、公明党が概ねほぼ現状維持の30議席超が想定される中で、自公両党で衆議院の議席の2/3を超えることが当初より想定されていました。当初よりの与党圧勝ムードができていました。

他方、野党側の事情を見ても、民主党も維新の党も300小選挙区すべてに候補者を擁立できておりませんでしたし、民主党と維新の党を合計したとしても300小選挙区全部をカバーできるだけの候補者を擁立できたわけではありません。

つまり、今回の総選挙は、始まる前から政権選択選挙ではないことが明らかでありました。

今回の選挙は、当初より、自公連立政権が維持されることが確定している中で、野党がどの程度議席を確保できるか、という選挙でありました。その結果として、当初より、日本全国、投票により何も変わらないことを肯定する、一種の消極的な現状信任ムードが蔓延し、歴史上稀に見る低投票率となることが想定されていました。

各個別の選挙区についてのメディア報道では、自公の与党vs野党という二項対立がクローズアップされて報道されました。野党候補者(具体的には民主党と維新の党)が一本化されないと野党候補は与党候補に勝てないという論調が多かったのではないかと思います。

このような状況の中、神奈川県9区を巡る報道においては、2回連続小選挙区当選を続けてきた民主党の現職候補者を追い風に乗った自民党候補者が倒すことができるか、という論調の報道となりました。私自身としては、現職三人同士の三つ巴の戦いという構図に持ち込みたかったのですが、完全に二項対立を煽る報道の中に埋没してしまったように思います。

③選挙のタイミング

今回の解散は、安倍総理が、自公政権の勢力を維持・発展させるために緻密な計算をしたうえで行われた、非常にベストタイミングのものだったと言えます。

裏を返すと、私たち野党議員にとっては、もっとも悪いタイミングで行われた解散・総選挙だったと思います。

安倍総理は、2014年9月初旬に内閣改造をおこないましたが、その直後から始まった第187国会において、新たに任命した小渕大臣、松嶋大臣、江渡大臣、宮沢大臣の四大臣について、大臣の資質問題が紛糾いたしました。各大臣について、それぞれ程度の軽重はありましたが、小渕大臣や江渡大臣については、かなり不適切な政治資金処理が問題となっておりました。野党側がこれらの問題をしつこく追及する中で、国会論戦もストップして不正常な状況になっていました。第一次安倍内閣の時には佐田大臣、松岡大臣などの大臣の交代により支持率が低下したということもあり、安倍総理は早急に小渕大臣と松嶋大臣を辞任させ、その上で支持率低下よりも前に解散をすることで、求心力(いわゆるポリティカル・キャピタル)の回復を行っていくという計算をしていたものと思われます。

維新の党については、2014年9月の国会開会直前に結党したばかりであり、知名度も十分ではなく、その国会での活動状況も十分に国民にアピールできている状況ではありませんでした。もともとみんなの党に属していた結いの党系議員と日本維新の会大阪系の議員とのコミュニケーションも十分ではない中で、手探りで政党の経営を始めた矢先に解散ということで、選挙に向けての準備はほとんど行われていない、準備不足は否めない状況でした。

私は民主党の状況については知る由もないですが、野党再編を巡り、民主党の内部においても対立があったように見受けます。野党再編に舵を切りたい若手議員と民主党の再生を掲げる執行部側で路線対立がある中で、選挙に向けての準備というものはほとんど行われていなかったように見受けます。

④選挙の政策的争点

安倍総理は、税と社会保障の一体改革に基づく消費税法の改正法附則18条に基づき、現下の景気状況を考えると、2016年10月に消費税10%への増税を行うべきではなく、1年半先送りするべきであるという判断を行いました。安倍総理は、この判断を国民に信を問う、という理由で、衆議院の解散を行いました。

民主党政権は消費税増税をしないと選挙で訴えたにも拘らず、政権の任期中に消費税の増税を行った事によって国民からの信頼を失ったが、安倍政権は同じ轍を踏むべきではないと考え、国民に信を問う、ということでした。

しかしながら、附則18条には、『…消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に…経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。』と定められており、当初より2016年10月の消費税10%増税の実行停止は選択肢の一つに入っています。明らかに、民主党政権が政権公約に反して消費税増税を行った場面とは異なります。粛々と附則18条に従って消費税増税の施行日を後送りする法改正を行えば足りるはずです。

維新の党、みんなの党、維新の党、次世代の党に所属している議員は、2年前の第46回総選挙から消費税増税凍結を訴えていました。2年前の政権政党として消費税増税の実施のための法整備を行った民主党ですら、第47回総選挙直前に附則18条に基づいて消費税増税の延期を行うことを了解しました。その他の野党も消費税増税の凍結を了承しておりました。全党賛成している消費税増税の延期は、構造的に選挙の争点になり得ませんでした。争うべき争点がないのであれば、選挙を行う必要すらなかったと言えます。

このような状況下でしたが、解散総選挙となってしまいましたので、各党突貫工事で選挙用マニフェストを作成しました。民主党は、安倍政権の経済政策では国民一人一人に豊かさが届かに事・格差が拡大していることを訴え、独自の経済政策を展開していきました。これに対して、私たち維新の党は、党の原点でもある公務員制度改革と国会改革を基本的な立脚点として「身を切る改革」を訴えていきました。身を切る改革を前提として、抜本的な規制改革、社会保障改革、地域主権改革などの「実のある改革」に着手していく必要性を訴えていきました。

安倍政権の経済政策が緒に就いたばかりであり、その効果が十分に出ていない中での解散であったこともあり、「身を切る改革」の訴えについては一定程度国民に届いたものの、抜本的な規制改革の訴えなどの「実のある改革」の訴えは国民に届かなかったのではないかと思います。各党、差別化を図り、争点を作っていくことが難しかったと考えています。

こういった場合には、有権者の皆様の多くは、新聞紙面やインターネットにおける争点に対する意見の比較を見定めていくということになるのだと思います。個々人がそれぞれ自分が重要だと思う論点を設定していくという時代になるのかも知れません。

総括

外部環境は基本的には候補者本人のコントロール下にはありませんし、自分自身の思う通りになるわけではありません。今回の外部環境は、あらためて冷静に見てみるほど、私自身にとって決して有利であったとは思えませんし、安倍総理は非常に良いタイミングで解散をしたと思います。しかし、それだけで自分が落選したわけではありません。以前書いた通り、外部環境、競合との比較、内生的事情、全てが複合的に絡み合い私は落選したのです。どんなに外部環境が自分にとって不利な場合であったとしても、きちっと選挙に勝ちきる人が本物です。時点においては、自分自身の中に改善点がたくさんあるのであって、自分はまだまだ本物とは言えないのです。私自身は、外部環境に流されない実力をつけるべく、精一杯努力をしてまいりたいと思います。

次は、落選原因のうち競合の事情について、まとめていきます。