僕は山本太郎参議院議員の今回の行動と発言は、特に評価はしない。
しかし、彼の指摘は全く無視するべきではないと思う。

今回のISILによる人質事件など、国際テロリズムに対する一連の政府の対応については、ある時期に達したときに、一定程度検証はした方がいいと思う。
特段批判的でもなく、また肯定的でもなく。淡々と事実を確認し、そして更なるチェックに耐えられるよう可能な限り客観的に。

アメリカでは、911テロを受けて、国会の法律にブッシュ大統領のサインを受けて、911委員会が立ち上げられ、911委員会レポートが作成された。テロから1年程経過後の事である。そして3年程度経過後の2004年には、レポート作成により、委員会が解散している。大学院に居た頃、この911レポートが授業の一つの参考資料として指定されていたので、私も部分的には読んだ。

イギリスでは、911テロののち、2003年からの米英によるイラク進攻につながる訳だが、このイラク進攻について、2009年以降約2年に渡り委員会による調査が行われた(いわゆるシルコット・インクワイアリーというもの)。このころ自分自身もイギリスに住んでいたわけだが、当時前首相のブレアがイラク侵攻に関して、公開インタビューをやるということで、テレビ・新聞等で大騒ぎであった。

こういったテロ関連の事件について、一定程度時間を置いた後に、きちんと独立した第三者委員会による検証を行うということは非常に重要である。
私がいた国会事故調というのは、まさにこういった国家を揺るがすような重要な事件が起きた時に、事後的に検証すべきシステムを日本の統治機構構造の中に組み込む一つの大きな契機であった。すなわち、国会事故調の存在意義は、事故調レポートの「内容」ではなく、日本の統治機構構造の中における事故調の「存在」そのものというか「形式」それ自体である。

行政の関与する案件に関して、本来立法府たる国会がいわゆる「国政調査権」という憲法62条に定められた権能を発揮することによって、チェックする機能を担うべきである。しかし、実際国会が行っている「国政調査権」の発露は、いわゆる「一般質疑」という名の、与野党議員による政府に対する質疑に終始している。
そして、この「一般質疑」、と呼ばれるモノは、国会議員及びそのスタッフが専門的な調査を専従的に行う人的物的な能力を持ち合わせてない関係上、結局メディアや学術論文、政府発表資料から、場当たり的に問題提起をする事に止まっている。
それどころか、「一般質疑」が、地元からの陳情を国会の議事録に残す場となっていたり、自分が根回しをして進めた政府の取り組みを誉めそやすだけの自己宣伝の場となっていたり、等と、立法府による行政府へのチェックという、憲法上定められた国政調査権の権能を果たしていないことも多々ある。

だからこそ、こういったテロ人質事件などを含む行政がかかわる重大事件に関しては、国会が「国政調査権」という憲法上のチェック権能を十分に発揮する為に、専従的にこのテーマについて取組み、専門的に調査する機関を「国会に」併設する必要がある。
内閣総理大臣という行政のトップからの委嘱ではなく、立法府から委嘱をされた第三者委員会が、立法府に対して実際に行政を監視監督するための素材として、調査結果を示していくことに意味があるのである。これが、「国会事故調方式」と私が呼んでいるものである。

私たちが2012年に国会事故調を解散する時に、この「国会事故調方式」を多様な案件に関して活用しながら、立法府による行政の監視権限を強化することが必要である、とみんなで確認し合ったものである。
東京財団が今ロビーに動いている、日本の財政を検証するシステムである「独立推計機関」を国会に設置しようという運動も、まさにこの国会事故調方式を応用したものである(既に出来ている法案の案文も、国会に国会事故調を設置したときの設置法案の案文を参考にしている)。

私は、今まさにおきている、ISILの人質事件についても、一定の期間の経過後に、国会事故調方式を採用して、国会に検証委員会を設けていくということが必要であるのではないか、と考えている。

なお、今回の人質事件に関するやり取りについては、外交関係の機微情報を多分に含み、特定秘密に該当する情報も含まれるということであるので、
例えば、委員会は全て非公開、レポートも国会議員のみに公開、国会議員に秘密漏えいを禁ずる、そしてこれを活用した国会での審議については全て秘密会(国会法52条2項、憲法57条1項但し書き)とする、30年後に証拠資料含めて国会図書館で公開などの対応をすることにする、などの工夫を考えることで、外交上の機微情報の漏えい防止に配慮することが大事である。
しかし、外交上の秘密が漏えいされると困る、という理由で第三者の検証を行わないという結論は適切ではない。どのように第三者機関による検証を実現するか、これを考えるのが国会の役割である。いずれにせよ、イギリスでもアメリカでも、外交問題に関して、第三者機関の検証が行われているのであるから、日本でもできないはずはないだろう。