1月19日(土)に行われました第1回市民公開政治討論会で話した内容の続きです。

政治討論会が終わった後、参加された実務経験も豊富な方々何名かから、「今日の話は良かった」と言っていただき、また学生の参加者の方々から会議室の予約時間をオーバーしてしまってもなお質問を受けつけましたので、私の発表はおおむね好評をいただけたのではないかと思います。

こういった、住民主導の形で、地元選出議員を討論会に呼んで議論をするということは、非常に素晴らしい試みだと思いますし、このような会を継続して行っていくべきだろうと思いました。民主主義を機能させるには、政治家のクオリティを上げていくとともに、住民側のリテラシも上げていかなければなりません。住民と政治家の民主主義社会における「市民」としての役割を相互に高めていく機能をもった活動として、こういった公開討論会があると思います。参加して初めて気づきましたが、こういった試みこそが民主主義の原点であり、国民の中に政治に対する不信とあきらめの感情がある現在において、こういった原点に回帰することは重要なのではないかと感じました。

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今、日本が抱えている外交課題で、早急に対策を打たなければならなければものは、

冷戦後の国の大戦略を作れていないこと。1980年代後半~90年代前半ころに冷戦が終了したにもかかわらず、冷戦前からの大戦略を漫然と引き継いでおり、ポスト冷戦期、ポスト・ポスト冷戦期の国際情勢に対応しきれていないこと。具体的には中国の台頭に対応しきれていないこと、これがあげられると思います。

これに対して、打つべき対策は、私自身の個人的な見解ですが、次のように考えます。

米国を中心とした自由主義・資本主義の価値観を共有できる諸国による集団的な安全保障同盟を作り(アジア版NATO)、経済的な結びつきと軍事的な結びつきとを併せて強化していく。

まず、事実認識として、日本を取り巻く国際情勢がどのようになっているか。これについては、ご承知の通りですが、中国他近隣諸国から、日本の領土を脅かされる状況にあります。また、3年3か月の民主党政権による外交運営の結果、日本の外交の基軸である日米関係の信頼関係と緊密さが若干薄れているそういう状況にあると思います。これらは基本的には、日本の国際政治における相対的なパワーの低下(その背景にある米国の相対的なパワーの低下)によって生じた現象なのではないかと思っています。

私自身、これら個別の現象について対策を講じていくことも必要だとは思いますが、それ以前に日本が戦略的にどのように立居ふるまっていくべきなのか、という大戦略の階層での議論をすることを前提とするべきだと思っています。外交・安全保障においては、現実主義の立場で考えることが基本だと思っています。国際関係は主権国家間の争いを強制力の裏付けによって統治することができる上位機関が存在しないので、弱肉強食のパワーゲームになります。ここで言っているパワーとは、必ずしも軍事力だけではなく、経済力を含むものです。これにソフトパワーというコンテンツ力を加えると主張するジョセフ・ナイという人もいますが、あくまでも補完的に考えておけば足り、国際情勢を見ていくには軍事力と経済力の観点から見ていくことが重要だと思います。

日本は戦後冷戦終結までの間ずっと、吉田ドクトリン(その延長線上にある日米安保)を外交戦略の基礎としてきました。国力のすべてを戦後の経済復興、経済成長にあて、国防をアメリカに担わせるという戦略をとってきました。要は、強大な覇権国が二極対立していることによって国際政治が安定していた中で、日本はアメリカと片面的な同盟関係を結び同調政策(バンドワゴン)をとってきたわけです。

しかし、冷戦終了後、国際政治の勢力分布(バランス・オブ・パワー)が変わってきました。1990年代から2000年代前半にかけて米国の一国覇権状態になり、そして米国の経済的な停滞により徐々に多極化構造に移行し、その後中国の台頭および長期にわたる軍事的な拡大の中で再び二大覇権国家になるかもしれないという状況です。現在、中国が台頭し始めてきており、日米の経済力が相対的に低下しております。この中で、日本がどのような戦略的な立ち位置を持って外交を行っていくべきなのか、という大戦略を立てられていないという点が問題なのではないでしょうか。その結果として、米国のリアリストからは、日本の外交戦略が米中を天秤にかけている(ヘッジング戦略)というように見られていると理解しています。鳩山元総理が東アジア共同体構想を打ち上げたときに、米国からこれに対する拒否反応が聞こえてきたのは、米国の国力低下に伴い、日本が米国との同盟関係を軽視し始めているように映っている、ということを表しているのではないでしょうか。

今後の日本のみならず、同盟国である米国についても国力の低下がおきている状況を踏まえた上で、日本が今後30年を考えてどのような大戦略を取るべきか、今決めることが必要であるように思います。基本的な方向性は3つの選択しか無いだろうと考えています。

①米国を中心とした自由主義・資本主義の価値観を共有できる諸国による集団的な安全保障同盟を作り、経済的な結びつきと軍事的な結びつきとを併せて強化していく

②中国との軍事的な関係性を作っていき、中国と経済的な結びつきと軍事的な結びつきを強化していく

③自主防衛可能な軍事力を整備し、国際政治の中で独自路線を歩んでいく

基本的な選択は①しか無いだろうと思っています。米国の国力の低下を多国間同盟で補っていくという方向性しか無いでしょう。これを踏まえると、日本が国際社会で果たして行く役割は重要になってきますので、さらなる経済力・軍事力の増強を図っていくことが必要になってくると思います。特に、対中国、対ロシアとの関係で外交的な交渉力を確保するためにも、パワーの再拡充、即ち経済成長や日米同盟の強化と日豪・日印・日韓といった関係の強化が必要ですし、補完的な形で日本のソフトパワーの輸出(クールジャパン戦略)が必要になってくると思います。

尖閣諸島に関しては、日本の立場としては領土紛争は存在しないという立場です。しかし、事実として、中国の民間船などが日本の領土・領海に侵入しているのも確かです。1970年代に東シナ海で天然ガスなどの資源が発見されて以降、中国は台湾の領有権を主張することを介して尖閣諸島の領有権を主張するようになりましたが、これはエネルギー確保が中国のもっとも重要な戦略的課題であるからです。1970年代に日中の密約で資源の開発に関する問題の先送りが決定されたと言われていますが、これ以上先送りすることは不可能だと思っています。日本が今から30年経ったときにどの程度の国際政治でのパワーを持っているのか(経済力がどの程度衰えているのか、米国の経済力・軍事力がどの程度低下しているのか)と中国がその時どの程度の国際政治でのパワーを持っているのか(経済力がどの程度発展しているか、軍事力がどの程度増強されているか)を考えるだけで、今よりも日本の交渉力が低下しているだろうと想像がつきます。資源の権益に関して明確な合意をしない限り、中国から日本の領土・領海を脅かされる状況は変わらないのではないか、むしろ問題が悪化するのではないかと考えています。米露を巻き込みつつ、資源の権益についての合意を取り付けるべく、粘り強く交渉していくしか無いのではないかと思っています。

時間もないので、日本の核武装についてと日本が国際紛争解決について果たすべき貢献については、結論だけを簡単に述べておきます。ニューヨークで修士号を取得した際に、日本は核武装をすべきか、という論点で一本エッセイを書きました。核武装については、国際政治の状況を踏まえた上で、仮想敵との間で相互確証破壊(MAD)が働くか否かのみで考えていくべきだと思っています。結論だけ言うと、現在の国債情勢下では、核武装は不要だと思うし、それをすること自体も不可能だと思っています。しかし、国際情勢の分析は常に行って行かないといけません。また、日本はノルウェーが今国際紛争解決にあたって果たしている役割と同様に積極的に国際紛争解決に首を突っ込んでいく事が望ましいと考えています。